戦後初の国産民間旅客機として知られるYS11。182機が製造され、1970年代は日本各地の空で活躍し、輸出もされた。2006年に国内の民間航空会社での運航は終わったが、自衛隊では「飛行点検機」という機体が今も活躍している。特別な取材許可をもらい、飛行開始から半世紀を経てなお飛び続けている現役YS11の飛行点検に同乗した。
飛行点検とは、飛行機を無線誘導する空港の設備が正しく動いているかを確認する作業。埼玉県の航空自衛隊入間基地に所属する「飛行点検隊」は国内唯一の専門部隊として、全国約160カ所にある陸海空自衛隊の施設点検をすべて受け持っている。
快晴に恵まれた10月20日、その点検機「YS11FC」に乗った。FCは「フライトチェッカー」(飛行点検)の意味で、機首から伸びる真っ赤な帯と垂直尾翼の赤い市松模様が特徴だ。65年に自衛隊に納入され、入間基地に配備された3機のうちの最後の1機という。もともとは自衛官の人員輸送を担っていたが、70年代に点検機に改造され、専用のアンテナやカメラが取り付けられた。
飛行前、柚木幸司3等空佐から注意があった。「点検飛行は上下左右にジグザグ飛行をするので、普通の人は酔います。ぎりぎりまで我慢しなくていいです。エチケット袋もありますから」。そして、アルファベットが刻印されたペンダントのようなものを渡された。認識票と呼ばれるもので、もし事故があっても、これで誰か判別しやすくなるという。
期待と不安を感じつつYS11FCに乗り込んだ。午後1時半、機体は、輸送機C1などが頻繁に離着陸する入間基地を飛び立った。
今回は入間基地の設備を点検す…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル